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社長さーん。 HAIREIがまたなんかやらかしたみたいですよ
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街中の私的工房(みんか)…
処分場から這い出て、力尽きた廃機‥彼は
何者かに拾われ、そこへ運び込まれた。

「おかえりな…ッ!?」

出迎えたのは…先日、修復を終えたばかりの人型ロボット、
メイコ(彼女がそう名乗った)だった。

「マスター、どうしたんですか、その……」

運び込まれた機体の状態を見て、
口を閉じるのを忘れた彼女に

『メイコ、今夜のリクエストだが‥』
マスターと呼ばれた者は修復ツールの用意をしながら指示を出す。
『テンションの上がる‥アツいのを頼む』

「わかりました」
メイコはPCに接続し、ライブラリを呼び出す。
「…検索」
蓄積された膨大な数の楽譜(ファイル)。
「…選択」
そのなかより、これから歌う曲を選び
「…同期」
自らの媒体(メモリー)へ書き込む。
それらは[ボーカロイド]と呼ばれた彼女達の儀式。

「‥完了」
接続解除後‥PCに伴奏開始を命じ、一呼吸したメイコは
機材と彼を繋げてゆく部屋の中心‥マスターへ向かい

「‥あなたの為に、歌うわ‥」

歌いはじめたとき、冷めた工房(へや)はアツい舞台(はこ)へと変わる。

『さあ、俺達も始めようか?』
マスターはメイコの激唱にあわせ、
蘇生作業に取り掛かる‥しかし

『覚悟してたが‥ここまで物理的損傷(ダメージ)が酷いとは』

作業台に寝かされた機体の胸に手を置き、
彼に刻まれた[コードネーム]で囁いた。

『おまえも祈れよ、カイト』

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【黄泉帰り・後日】

『なんだありゃ‥』

廃機に近付く影。

『‥廃機(ドール)か?』

機体に触れ、無事そうな部品はないかと探った手で‥
携帯電話を取りだし

『あー‥モナぽん?チョット、今から送る場所(トコ)に車持って来てくれ』

【ヨミガエリ/序】

軽トラックのエンジン音が近づく。

「どうしたモナ?」

運転席から顔を出したのは猫型ヌイ‥AA系ロボットだった。

『面白いものを見つけた』
「‥また、モナ?」

車から降り、現場に近づく。

『[彼女]の次は[彼]…何かの縁なのかねぇ、コレは』

彼と呼ばれた廃機(もの)は毛布に包まれ、
荷台に積まれて何処かへと消える。

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町外れにある最終処分場‥
それは主をうしなったロボット達が、
原材に還るまで棄て置かれる場所。

ここに持ち込まれたモノは
不慮の起動による事故を防ぐため、動力と可動部は外されるのだが…
たまに未処理のモノが、混じっていることがある。
それでも電池切れなので動く事はないはずだが‥

「‥めeちa‥n」
傷だらけの腕が、山を崩した。

「‥どkにいttたn」
はいずり出した、身体。

未処理、とはいえ廃棄物‥
皮膚は破れ、剥き出された外殻、
割れた場所からはみ出た原色のケーブル‥
欠けた部品が、痛々しい。

「m‥chぁん」

割れた声で誰かの名を呼ぶ顔は、片方の目が‥ない。

全身が出た直後、バランスを崩し、山から転げ落ちた。
固い地面にたたき付けられた衝撃で割れ落ちる様々な部品。
それでも

「めーch‥」

誰かを探しながらさ迷い動く姿は、
ふるい映画に出てきた[ゾンビ]のようだった。

しかし、それは偶然に与えられた、仮初めの命。

クズ山から、処分場から抜け出した廃機は‥

「…めーちゃん」

最期までその名を呟いて‥動きを、止めた。

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ある夜、わが許に紛れ込んできた旅人は
よくココまで来たな…と本気で言いたくなるくらい、
なんともふざけたパーティ編成…だが、面白い。

褒美にコイツが望むものを‥いや、
私の持つ全てをくれてやろう。
今の私には、もう……

『ココまでたどり着くとは…見事なものだ。
褒美に世界の半分と、もう一人望みのモノをやろう。
ついでにこの城と、四天王…我が僕どもも
おまえの好きに使えるようにしてやる』

「いらない」 旅人はあっさりと断った。

『なぜだ?魔王の権利を全部やるというのに‥』

「魔王?あなたは魔王なのですか…?」

『そうだ。この世界を、混沌としたものに変えた、
魔王…旅人ならば、我が名を聞いたことはあろう?
その根城に今…お前たちはいる。』

私は彼らに、もっと近くに来るように促す。
部下に見られたら一騒ぎどころじゃない。
しかもこんな話を…

「…なぜ、そんな話を?」 旅人は尋ねる。
『魔王でいるのに飽きた。』 私は正直に答えた。

「飽きたって…‥」 旅人は呆れる。

「魔王さんって、そんなに退屈なんですか?」
旅人の仲間が、トロっとした声で問う。

『…あぁ、退屈だ』 私は吐いた。

…はじめは楽しかったさ。

この地に城を構え、召喚書を片手に
各地から様々な種を呼び出して、
引き連れて進軍…立ちはだかるものは潰して‥
充実した日々を過ごしたものだが

…いつからだろう。

『私が出る。と言えば、部下が止める…
[そういうことは、私達が]とか言って。
皆の気持ちも解るが…やはり、退屈なものさ』

「だから、見ず知らずの私に譲ると?
…そんなお話、全力でお断りですね」

旅人は笑った。

「私は【育てる側】の人間‥ココにいるモノたちは、
イチからココまで育て、仕上げていきました。
それはもう……あなたなら、解るでしょう?」

仲間の頭を撫でながら、旅人はもう一度笑う。
なるほど、お前も‥‥

『完成品を渡されても、つまらないか』

私は旅人へ礼の品を渡し、適当な街に送った後、
ひとつの種を魔方陣から取り寄せた。

勇者という名の、種…

コレを、世界のどこかに蒔いて育てれば…
しばらくの間、退屈から開放されるだろう。

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