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社長さーん。 HAIREIがまたなんかやらかしたみたいですよ
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カレンダーの日付は、赤い。
こんな日に打ち合わせだなんて…

…あぁ、なんてこった

予報は晴れ、降水確率0%。
そんな日は空が青く澄みきって…

…あぁ、仕事場に居たくない

画面の片隅に浮かぶ時刻が、
僕に希望(よいかんがえ)をくれた。

「今ならまだ、間に合うかな」

そうだ、場所を変えよう。
あの秋空が楽しめるカフェで
この前出た、甘い新作を挟んで…

そんな我儘(ねがい)を込めて、
僕は端末に浮かぶ連絡先を押した。

こんな突然の思いつきを
あのひとは許してくれるのだろうか?

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「‥わかりません」
[死というもの]がない私達に、
そのような機能は備わってはいない。

「しかし‥それは有り得る話です」
もし、[その時]がきたならば。
マスター‥私は、誰を呼ぶのだろう。

『‥メイコ。これからの作業なんだが…』
それは決意の音。
『ひとつ、頼み事がある』
命令ではなく、嘆願。

「それは、彼の為なのですか」

失われた記憶の補完。
だが、それは私達に[嘘]を書き込む事。

『それは判らない…だが、あんな事は
[悪いユメ]であって欲しい』

悪いユメ。私はもう一度、眠ってる彼を見た…
私と同じ、機械の身体。
繋がれたケーブルの先の頭脳…記憶装置。
そのなかに残されていたモノ…

「了解しました」

それが何であろうが…これ以上は問うまい。

『ありがたい返事だ、でも
キミには辛い思いを、させる。
それでも…協力してくれると?』

今はマスターの判断を信じよう。
それがカイト‥あなたの[魂]を救うというのならば、
どんな[嘘]も受け入れよう。

「覚悟は、出来ました」

だから‥蘇らせてください、私のように

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マスターは作業の手を止めたまま、
私は立ち尽くしたまま…
機器の動作音だけが響く‥長い長い時間。
自分がした事が招いた沈黙。

『‥はじめてだな、こういうのは』
それを解いたのは、低く、冷めた音‥

「ゴメンナサイ」
私もはじめてだった。
こういう時‥いままでならば怒鳴られ、ときには…

「ゴメンナサイ」
『どうして謝る?』

どうして?
何故‥そんな質問、声を出すの?

「だって、私は‥」

主人(あなた)の命令(こえ)に従わなかったのに。

『そういう時も、あるよな』
マスターは椅子の向きを変え、
私へ傍に来ていいと許可を出す。
今度は従い、あなたに問う。
「‥そういう時とは?」

『イロイロあるが‥』
挙げられた多くの事例、その最後は
『一番多いのは命令‥
言葉に納得が出来ないとき、だろうね』
機械には理解し難い答えだった。

『…君達の思考設計(プログラム)は、とても人間に近い。
自分で考え、行動する。
命令を聞かないときも、疑問を抱き、問うときもある‥』
再び背を向け、画面に映し出されたモノを見つめるマスター。

『彼‥カイトも、そういうモノだったようだな』

作業台で眠る、機能停止‥仮死状態にある
カイトと呼ばれた男性型ロボット。
彼に残された記憶の一部をマスターは私に見せ、こう言った。

『臨終(さいご)の時‥
我々(ひと)は、最も大切な者の名を呼ぶそうだが‥
君達も、そうなのだろうか』と。

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『テンションの上がる‥アツいのを頼む』

要求を受け入れ、私は歌う。
マスターの為に‥

『さあ、俺達も始めようか?』
激しく傷付き、運び込まれてきた‥
『おまえも祈れよ、カイト』

‥あなたの為にも。

注意深く、データの保存状況を調べていた
マスターから安堵の音が聞こえる。

『第3と第4は‥無事だったか』

第3メモリー。
それは私達の記憶が圧縮され、溜まる場所。
そこと根幹の第4が無事‥
[生きて]いるなら、私達は‥…あなたは蘇る。

『コッチも掬い上げられたら‥』

そう言って、第2メモリーを調べていた
マスターから‥嘆きの音。

『なんなんだよ』

頭に手をやり、髪をグシャグシャに掻き回す仕種、
そして叫び声‥

「‥マスター?」

数十曲回目の途中で、私は歌うことを止めた。

頭を抱え、デスクに沈んだ身体から漏れてきた濁り声。

『こんなモノ、どうしたら!』
‥[自分のとき]からは聞こえなかった、憤りの音。

「‥どうしましたか?」
私はマスターの傍へ駆け寄る、しかし

『‥来るな。』
あと、数歩の位置で止められた。

「‥でも」
私は爪先を半歩前に置く。
『‥寄るな!お前は、アッチで歌ってろ!』
引き返し、再び歌うよう命じられた。
それはとても昔に聞いた‥‥嫌な音。

「その命令には、従えません。」

嫌だ。今のアナタに、聴かせる歌なんか‥ない。

『聞こえなかったのか?』
まだ、荒い音。だけど、悲しげな音。
『戻れと言っている』
命令(コマンド)は入った、だけど私は動かない‥

「歌いたく、ありません」
‥初めて、アナタに逆らった。

『逆らうのか‥』
溜息の後、マスターから音が消えた。

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