忍者ブログ

2017
07
25

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2017/07/25 (Tue.)

2011
11
26

ヨミガエレ2


マスターは作業の手を止めたまま、
私は立ち尽くしたまま…
機器の動作音だけが響く‥長い長い時間。
自分がした事が招いた沈黙。

『‥はじめてだな、こういうのは』
それを解いたのは、低く、冷めた音‥

「ゴメンナサイ」
私もはじめてだった。
こういう時‥いままでならば怒鳴られ、ときには…

「ゴメンナサイ」
『どうして謝る?』

どうして?
何故‥そんな質問、声を出すの?

「だって、私は‥」

主人(あなた)の命令(こえ)に従わなかったのに。

『そういう時も、あるよな』
マスターは椅子の向きを変え、
私へ傍に来ていいと許可を出す。
今度は従い、あなたに問う。
「‥そういう時とは?」

『イロイロあるが‥』
挙げられた多くの事例、その最後は
『一番多いのは命令‥
言葉に納得が出来ないとき、だろうね』
機械には理解し難い答えだった。

『…君達の思考設計(プログラム)は、とても人間に近い。
自分で考え、行動する。
命令を聞かないときも、疑問を抱き、問うときもある‥』
再び背を向け、画面に映し出されたモノを見つめるマスター。

『彼‥カイトも、そういうモノだったようだな』

作業台で眠る、機能停止‥仮死状態にある
カイトと呼ばれた男性型ロボット。
彼に残された記憶の一部をマスターは私に見せ、こう言った。

『臨終(さいご)の時‥
我々(ひと)は、最も大切な者の名を呼ぶそうだが‥
君達も、そうなのだろうか』と。

拍手

PR

2011/11/26 (Sat.) Trackback(0) Comment(0) 書き物

2011
11
26

ヨミガエレ1


『テンションの上がる‥アツいのを頼む』

要求を受け入れ、私は歌う。
マスターの為に‥

『さあ、俺達も始めようか?』
激しく傷付き、運び込まれてきた‥
『おまえも祈れよ、カイト』

‥あなたの為にも。

注意深く、データの保存状況を調べていた
マスターから安堵の音が聞こえる。

『第3と第4は‥無事だったか』

第3メモリー。
それは私達の記憶が圧縮され、溜まる場所。
そこと根幹の第4が無事‥
[生きて]いるなら、私達は‥…あなたは蘇る。

『コッチも掬い上げられたら‥』

そう言って、第2メモリーを調べていた
マスターから‥嘆きの音。

『なんなんだよ』

頭に手をやり、髪をグシャグシャに掻き回す仕種、
そして叫び声‥

「‥マスター?」

数十曲回目の途中で、私は歌うことを止めた。

頭を抱え、デスクに沈んだ身体から漏れてきた濁り声。

『こんなモノ、どうしたら!』
‥[自分のとき]からは聞こえなかった、憤りの音。

「‥どうしましたか?」
私はマスターの傍へ駆け寄る、しかし

『‥来るな。』
あと、数歩の位置で止められた。

「‥でも」
私は爪先を半歩前に置く。
『‥寄るな!お前は、アッチで歌ってろ!』
引き返し、再び歌うよう命じられた。
それはとても昔に聞いた‥‥嫌な音。

「その命令には、従えません。」

嫌だ。今のアナタに、聴かせる歌なんか‥ない。

『聞こえなかったのか?』
まだ、荒い音。だけど、悲しげな音。
『戻れと言っている』
命令(コマンド)は入った、だけど私は動かない‥

「歌いたく、ありません」
‥初めて、アナタに逆らった。

『逆らうのか‥』
溜息の後、マスターから音が消えた。

拍手

2011/11/26 (Sat.) Trackback(0) Comment(0) 書き物

2011
11
17

ヨミガエリ2

彼の復元作業は困難の連続であった。
まず、物理的損傷の激しい頭部と
下腹部にある予備データを吸い出し‥
仮の機体へ移すのに一晩、

部品の調達と組み上げに一月、

データと機体の調整が済んだ頃には、
季節が移り変わっていた…

「‥」
瞼を開いた彼は、起き上がって辺りを見回す。
いつもと違う光景に戸惑っているのだろう

「コこハどコ、イまハなンネんなンガつなンニちなンジなンプん…」
声を乱し、質問を連発する。

『ここはお前の家、今は20XXMmDd…』
それに答えてゆくマスター。

「アナタはだれですか」
状況把握…落ち着いたのだろう、声が通常に戻った彼は
一点を見つめ、もう一度問い掛けた。
「アナタは、誰ですか」
青い目に映る、生身の人間は
『俺はお前の、マスターだ』
自らの名を、彼に告げる。

「マスター?では僕の名前を、言ってみてください」
『カイト。ったく、お前‥寝ぼけているだろ?』

マスターという人間は彼‥カイトに
幾つかの嘘をついている。
ふたりのやり取りを傍で聞いていたメイコは、目を細めて呟いた。

「私のときと、同じ」

その口元に、笑みをこぼしながら。

拍手

2011/11/17 (Thu.) Trackback(0) Comment(0) 書き物

2011
11
17

ヨミガエリ1

街中の私的工房(みんか)…
処分場から這い出て、力尽きた廃機‥彼は
何者かに拾われ、そこへ運び込まれた。

「おかえりな…ッ!?」

出迎えたのは…先日、修復を終えたばかりの人型ロボット、
メイコ(彼女がそう名乗った)だった。

「マスター、どうしたんですか、その……」

運び込まれた機体の状態を見て、
口を閉じるのを忘れた彼女に

『メイコ、今夜のリクエストだが‥』
マスターと呼ばれた者は修復ツールの用意をしながら指示を出す。
『テンションの上がる‥アツいのを頼む』

「わかりました」
メイコはPCに接続し、ライブラリを呼び出す。
「…検索」
蓄積された膨大な数の楽譜(ファイル)。
「…選択」
そのなかより、これから歌う曲を選び
「…同期」
自らの媒体(メモリー)へ書き込む。
それらは[ボーカロイド]と呼ばれた彼女達の儀式。

「‥完了」
接続解除後‥PCに伴奏開始を命じ、一呼吸したメイコは
機材と彼を繋げてゆく部屋の中心‥マスターへ向かい

「‥あなたの為に、歌うわ‥」

歌いはじめたとき、冷めた工房(へや)はアツい舞台(はこ)へと変わる。

『さあ、俺達も始めようか?』
マスターはメイコの激唱にあわせ、
蘇生作業に取り掛かる‥しかし

『覚悟してたが‥ここまで物理的損傷(ダメージ)が酷いとは』

作業台に寝かされた機体の胸に手を置き、
彼に刻まれた[コードネーム]で囁いた。

『おまえも祈れよ、カイト』

拍手

2011/11/17 (Thu.) Trackback(0) Comment(0) 書き物

書いてる人

HN:
HAIREI
職業:
地雷踏み
ひとこと:
俺の屍を越えてゆけ。

最新記事

記事分類

月別記事

リンク

Get Adobe Flash player

RSS